2017年7月31日月曜日

卓上蛍光灯の修理

インバーター式蛍光灯の修理

子供たちが使っていた机上蛍光灯を入手しました。なんでも、壊れて点灯しなくなったので捨てるとのことでしたが、「もったいない精神」の旺盛な小生としましては、奥さんが「またガラクタをためるな」との言葉も無視して、早速、点灯しない原因の追究と修理をすることにしました。もう十年以上も前に購入した卓上式蛍光灯です。その当時ははやりのインバーター式というもので、昔の「ちかちかぱっ」のグロー放電管による蛍光灯ではありません。最近は蛍光灯もLED式に移行し省エネがどんどん進んでいます。

入手した蛍光灯は2台、いづれもインバータ式です。
1.蛍光灯NOー1の修理
 ツインバードのLK-8291型です。10年以上前に購入したものです。

(1)故障の症状
   電源スイッチをONにしても点灯しない
(2)分解調査
   断線発見・・・・蛍光灯から回路基板に接続する線が基板端で断線
(3)修理
   断線箇所をはんだ付け。
(4)結果
   点灯しOK
(5)しかし
   その後また故障

(6)今度は回路のチェックから開始です。
   見た限りでは故障部品なし、はんだ割れによる接触不良もなし。
   電解コンデンサの容量抜けなどもなし(部品を取り外して容量チェック)
   もちろん頭も破裂していません。
   どういう回路で動作しているのか興味があったので、回路図をおこしつつ部品
   をはずして動作チェック
(7)回路図
・パワートランジスタのB-E間が短絡
   ・蛍光灯への高電圧発生用パワーコイルが焼損の模様。
     WEBで検索してみつけた同種の蛍光灯の回路図の数値とかなり異なる。
     どうも、発熱でコイルが焼けてパワーTRに負荷がかかり、発信用
     フィードバックコイル経由でパワーTRを破損させたと思われる。
(8)部品交換
   ・類似のパワーインダクタと互換TRをみつけて購入。 部品交換
       パワーTR   MJE18002 ⇒ BUX85G
       パワーコイル  8mH ⇒ 10mH
(9)結果
  
点灯しました。しかも従来より若干明るいです。
あとで、蛍光灯点灯時の蛍光管への印加電圧を観測しました。約150Vppで点灯しています。




2.蛍光灯NOー2の修理
  これは、オーム電機㈱のODS-27Sです。こちらの製品は昨年2月に”発火の恐れがある”とのことで、回収返金対象になっていた製品です。それ以前に回収修理の案内があったようですが、修理から回収返金に変わったようです。返金額は2000円で、結局、現物を返品する手続きをしました。このことを知っていれば、以下で実施した無駄な(?)作業はしなくて済んだのです。部品も購入しました。

3.調査
蓋をあけて中をみてみると。蛍光灯からの配線が回路基板につながる部分が断線しています。簡単な修理です。はんだ付けしなおし、無事復帰です。

4.しかし、一週間ぐらいでまた故障です。
電源回路の二つある電解コンデンサのひとつの頭が爆裂していました。やれやれ、コンデンサ交換です。しかしなぜ? コンデンサは200V耐圧、33μFです。手元にないので手持ちの代替品(少しオーバースペック)に付け替えてみましたがダメです。

4.回路図
まあ、興味もあるので回路調査です。


回路を調査し描き起こしました。ツインバードの回路より複雑でコストがかかっていますが。なんというかすっきりしない回路です。メイン基板に小型のサブ基板が搭載されており、ここでタッチスイッチ回路を実現しています。メイン基板ではパワーTRを二つ使い、交互にON-OFFさせた発信回路でパワーインダクタに蛍光灯を点灯させるための高圧を発生させています。この電圧はツインバードを参考にすれば定常で150Vpp程度で良いはずです。そして、電源ですが2倍圧整流にしており、電源の電解コンデンサが二つ必要です。さらに蛍光灯のON/OFFには半導体スイッチとこれをドライブするためにフォトカプラが使われ、タッチスイッチ回路からの制御を受けています。GNDレベルのつじつまを合わせる(?)ためにフォトカプラ用電源、タッチスイッチ用電源が苦労して(?)作りこまれておりツインバードの回路のようにもっと簡単、低コストになるんじゃないといった回路です。
まあでも、買ってしばらくは動いていたので、復活できるはずです。何がこわれたのでしょうか? 

5. 部品交換
出力側のパワーインダクタがどうも短絡していそうです。パワーTRもこの際、代替品に交換します。電解コンデンサも交換します。インダクタはとりあえずツインバードで使った10mHですが、若干の疑問、電源電圧がちがう(高い)ので少し減らすべきかもしれません。がしかし、とりあえずどうなるかやってみよう。ということで、部品をRSで買って交換し電源投入・・・・・点灯しました。といいたいところですが、ぽかぽか点滅を繰り返すのみです。蛍光管への印加電圧波形を観測しました。


高すぎる!!。 300Vppもあるじゃないですか。こっれではマズイので。やはり、インダクタを小さくしてみます。手っ取り早く、購入した部品は巻き戻しができそうです。インダクタンスを見ながら巻き戻して約半分5mHにしました。

6.テスト2回目
ダメです。点灯しません。そして、電源ヒューズ(2A)が一瞬真っ赤になり溶断しました。やれやれ。その後、発火の恐れ回収返金の情報をみつけ、返品しました。多少勉強になりましたが無駄な時間だったでしょうか?

以上

2017年7月3日月曜日

ゼンマイ式壁掛け振り子時計の修理

このブログは、様々な趣味のモノづくりの過程を記録するためのものです。過去の記録はFace Bookに記録されています。今回、ブログとして新規開設することにしました。ジャンルは多岐に渡ります。電気工作、機械修理、農作業、林業(趣味の間伐)などです。最近は人工知能があります。 

ブログ開始:
第一回: ゼンマイ式掛け時計の修理・復活 はじめに
実家にあった古い掛け時計。昭和初期に作られたもので、高校生になるまでその時報を聞いて育ちました。家が縫製業をしていたため、ミシンが何台かあり、油をさして機械をメンテするのを小さい時から見ていました。この掛け時計もかなり頻繁に油をさしていました。現在すでに50年以上経過し、ゼンマイが切れて物置にしまってあったのが廃棄される寸前で見つけて、今回これを修理しようと思います。あのなつかしいチクタク音と時報が蘇ることを期待しています。

第2回: ゼンマイ式掛け時計の修理・復活 時計の状態
 四角い壁掛け式時計 前面の板(ガラスの窓)が紛失、ガラス(丸、四角)のみある
 時計側ゼンマイは正常、時報側のゼンマイが切れている。
 <修理内容>
 ① 機械部分を分解し、部品単位で清掃
 ② 歯車の軸受け部分の摩耗状態のチェックと必要なら修理
 ③ 切れたゼンマイの修理・・・どうやって?(交換部品なし)
 ④ 再度くみつけ、油をさして、調整
 ⑤ 紛失している前扉の作成   ⇒ 完成

第3回 分解作業
 いろいろネットを検索して分解方法をチェック
 ① ゼンマイは不用意に分解するとかなり危険なものなので、あらかじめ針金でほどけないようにしばっておくか、ロックをはずして、ゼンマイをほどくかしてから分解する必要がある。
  ⇒ ゼンマイの修理清掃もするので後者で実施。専用の工具があるようですが、わざわざ購入せず、ネジまき金具の回転を手で押さえながら、ギアのロックを外して少しずつほどいてゆきます。
これが、ゼンマイをすべてほどいた状態のメカです。左が時報用、右が時計用です。
ゼンマイの回転をロックする部品です。白色の金具がバネで、先端の丸い部分がその下にある爪のような部品(写真では爪から外してあります)を押さえつけてゼンマイによるギアの回転を一方向に制限しています。左右のゼンマイのギア部にそれぞれあります。

第4回 分解作業つづき
表の面に4カ所のナット、裏面に1っカ所のナットがあり、これを外すとバラバラになります。慎重に表の板を持ち上げてはずします。分解した部品は次の写真です。

部品は洗浄剤で油分を除去し、組みつけあとに油をさします。古い機械式時計でよく見られるのが軸受け部分の摩耗による位置ずれだそうですが、この時計は普段からよく油がさしてあったので目立った軸穴のずれはありませんでした。あれば、たがねなどで軸の金属を変形させよせて穴位置を修正したり、或いは軸受け部を作り直してはめ込むなどの修正が必要です。今回は必要なしです。あとで正しく組み付けられるように手書きの配置図を残しておきます。

上が時報部、下が時計部です。

第5回 動作の仕組み(時計部)
この時計はたしか一回ゼンマイを巻くと一週間ほど動きます。そのように強力なゼンマイが搭載されています。長針と短針を所定の関係で回転させるしくみがあり、正確な時刻を刻むのに、振り子が使用されています。長針、短針は2重構造の軸の内側と外側に取り付けられ、長針1回転で短針が12分の1回転するようにギアが接続されています。ギアの回転力はゼンマイから来ますが、正確な時をきざむために、何段かのギアで増速して最終的に振り子の動きに合わせて回転する歯車で回転速度が規制されます。時計のケースを垂直にした場合に振り子の動きに対してこのギアがチクタクと動くのですが、チク⇒タク、タク⇒チクのそれぞれの時間間隔がほぼ同じになるように振り子につながる案内腕の曲がりを調整する必要があります。これがづれていると振り子がそのうちに止まってしまいます。

第6回 動作のしくみ(時報部)
時報部のしくみは面白いです。よく考えられていると感心しました。時報は毎正時にその時刻の数(1~12打)だけうつのと、毎30分に1打打ちます。どのようにしてこの仕組みを実現しているのでしょうか? この構成を実現するのが特殊な切り込みを入れたギアです。全体の動作は連動して動く4個の細い金属棒によりコントロールされます。4個の内ひとつめは時計部の長針の回転によりその半回転、すなわち30分毎に押し上げられます。ふたつめは、時報部のダンパーの一つ前のギアにつけられたピンに作用してこのギアの回転を通常は止めています。連動金属棒が押し上げられると回転がフリーになり時報を打ちます。三つ目はさらに一つ前のギアに取り付けられた一回転で2カ所の大きな切り込みのある回転盤に作用します。この回転盤には2カ所の切り込みの2カ所ある中間部のピンで、音を出す金属棒を打つハンマーを持ち上げて1回分の時報を打ちます。そして最後四つ目は、毎正時の時報や30分毎の時報の回数を制御する特殊な切り込みを入れた回転盤(制御盤)に作用します。まとめると、30分毎に連動棒が持ち上げられ、ダンパー手前のギアの回転が開放され時報が一つなり、制御回転盤の切り込みが一つ進む。この時その切り込みが深ければそれで時報終了。浅ければ引き続き次の時報を打つ。これを深い切り込みまで繰り返す。ということです。ギアの回転位置関係、特にダンパー手前の二つのギアの位相関係が正しくないとうまく動作しません。

第7回 切れたゼンマイの修理
時報部のゼンマイが中心部から3分の一くらいのところで切れていました。切れた両端部に穴を空けて金属ワイヤで結合することにしました。ゼンマイの金属は焼き入れがしてあり簡単に穴あけ加工できません。ダイヤモンド粉末をまぶしたドリルで穴あけし、同時に切断部の端面を同じくダイヤモンドやすりで丸めます。

穴あけ用に使ったドリルと、結合したゼンマイです。ステンレス製のΦ1.5金属ワイヤでつなぎました。
ぜんまいの接続方法は、古い文献によてば上の図のように、切断部を加工してつなぐとありましたが、どうやってこの固い金属に穴加工するのか?また、すでに渦巻き状になっている金属なので加工も大変です。単純な穴程度ならなんとか先の方法で開けることができました。

第8回 文字盤
文字盤は文字がかすれていましたので、油性マジックで描きなおしました。

第9回 組み付け

組み付けでは複数のギアの軸を軸穴にすべて入れる必要がありますが、根気よく外れているギアを穴に入れるのを繰り返して全体を組み込みます。ギアの軸部には、自電車のベアリング用オイルがたまたまあったので使いました、あとは機械油をまんべんなくさしました。

第10回 時間調整
時間調整は、もちろん振り子の長さで行います。その前に、チクタクが同じ間隔になるように振り子につながる腕の曲がりを調整します。その後1日単位で時間の誤差を見て振り子の調整ネジで重心を上下させます。
振り子の下部にあるネジを回すと振り子の円盤部が連動して上下する構造になっています。

第11回 時計ケースに対する振り子の垂直度調整
この調整は重要です。時計ケースを壁に垂直にかけた状態で、振り子の揺れが永続するためには、その振れの中心と、チクタクの歯車を動かす2個の爪の動きの中心とが一致しないとダメなのです。多少の許容範囲はあるようですが多分1~2度程度の精度は必要でしょうか。この調整は、チクタクの爪を動かす長い金属線が振り子の根本の動きから力を受けるわけですが、この長い金属線の微妙な曲がり具合というか、振り子垂直位置とチクタク動作の爪の中央(対称位置)とが一致するように曲げ具合を調整するのです。時計ケースを水準器で正しく設置し、チクタクのDutyが50%になるように耳で聞きながら金属線の曲がり具合を調整します。これがうまくいけば、振り子の振れが永続します。ダメだと1時間程度以内で止まってしまいます。一日動き続ければまず大丈夫でしょう。止まる原因には他にメカの摩擦ロスがあると思います。油を差すか、軸の偏心もあるかもしれません。


第12回 時計ケースの全面蓋の修理
時計ケースの前部扉が破損し、部品も紛失しています。丸と四角のガラスは残っています。文字盤を固定する板も破損しています。これらを修復しました。


台座の板の左側の部分が欠損していたので、厚さ5㎜のベニヤ板がたまたまおかしの箱の素材と同じなのでこれをつなぎ合わせて形状を出し、木工ボンドでつなぎ、裏に補強板をつけました。なかなかうまくできたものだと自画自賛しました。

第13回 前面化粧板の作成
前面パネルは消失し、若干の部品が残っているのみでした。幸いはめいこまれていた丸いガラスと四角のガラス板も健在でした。記憶と断片部品からの想像を頼りに再生するしかありません。古い時計をネットで検索もしましたが類似品はありませんでした。
各部の寸法をとりだいたいのところで製作しました。ニスでそれらしく色付けもしてできた完成品が以下の写真です。いまいちの雑なつくりですが、形にはなりました。

振り子の調整もしていまのところ毎日動いています。ゼンマイ巻きは三日に一度くらいにしています。午前と午後の区別がないので、深夜でも時報を鳴らしてくれます。寝室ではやかましくて使えないので事務所の壁にかけて使っています。前面の蓋がついて風の影響は受けにくくなり月に数分の誤差までは調整できそうです。毎時と30分にきれいな時報を鳴らしてくれます。自分が小さいころに聞いて育った懐かしい音色です。

以上。終わり